6年間育てて来た息子は、他人の子だったという話。福山雅治さんが出ていて話題になっていましたね。賞を取ったり、スピルバーグがハリウッドでリメイクしたいと言ったり、何かと話題でした。
福山さん演じる野宮家は東京の高層マンションに住むエリートサラリーマン一家。 かたやリリー・フランキーが父親を演じる一家は小さな電気屋を片田舎で営んでいるという、対照的な家族が出てきます。なんか服の色味からして対照的で、エリート一家はダークなトーンばかりの、襟のつまった服ばかり着ていて、電気屋さんの方は明るい色の、それこそアロハシャツやタンクトップなどのラフな服装ばかりという感じでした。
取り替えられてしまった子どもを、生みの親へそれぞれ戻すのか否かというのが問題になってくるのですが、子どもがいる身として、自分にそんなことが起きたらどうすんだろ?と考えました。ネタバレですが、最後このお話も結論が出ないのです。二つの家族は迷い、揺れているままなのです。もし自分だったら子どもの希望をとにかく聞きたいと思います。このお話では子どもに本当の事を話さないまま進んで行きます。だから子どもは急に親が変わって戸惑い、自分は捨てられたんだと思って傷つくのです。
6歳の子どもだからって、真実を話さないというのは私はおかしいと思いました。子どもは、話せば分かります。それで、何が正しいのか、どうすればいいのかという答えを出すのが難しいとしても、真実を知ってるかいないかで子どもの心は全然違うと思います。真実を話し、その時の子どもの希望を聞き、また子どもの心が変わったら話し合って、出来る限り希望を叶えてあげたいと思います。自分で選択した答えだったら、子どもも受け入れられるかもしれません。そして子どもに、決して愛情が失われたという事ではないのだと繰り返し伝えなくてはなりません。
あ、でもこの話は父親の有り様の話だったのか、、、。いやもう、どっちの親でもいーよ。どっちも良い父親だと私は思いました。リリーさんでも雅治さんでも、どっちも素敵よ。暴力ふるわないし、普通に働いてくれて、子どもの事で真剣に悩んで、それで十分だと思います。
最近なかなか集中して映画を観れませんが、これは前から観たいなーと思っていた映画でした。美術に詳しいくない人でも「あれ、これどこかで見た事あるな」というような有名な絵画がばんばん出てきます。あれは一体どうやって撮影したのかしら?まあ、今の映像加工技術を持ってすれば何でもできるんだろうけど。突然ネタバレするかもしれないので、観る予定のある方は読まないほうがいいかもしれません。
この映画は、掴みが非常にうまい。「気になる〜どうしても続きが見たい〜!」と思わせる映画です。私も予告をみて、それだけでどうしても観たいと思った者です。凄腕の鑑定士オールドマンが、長年引きこもってる女性から美術品の鑑定依頼を受け、まんまとその女性に恋してしまうわけですね。その女性がなかなか最初姿を見せないので、気になってどんどん続きがみたくなるという訳です。全然姿を見せない女性が、いざ姿を現した時に、めちゃくちゃ美人だったら、誰だって好きになってまうんやないかと思います。しかも自分だけを信用して頼ってくれたら、何だってしてあげたくなりますよね。
私はこの監督の映画は好きですが(特に「マレーナ」)この「鑑定士〜」に関して言えば、好きになれませんでした。あまり「救い」を感じなかったからです。オールドマンは、孤児院で育ち、苦労して自分の鑑定の腕を磨き、頑張って生きて来た老人なのです。その老人をよってたかってみんなでいじめるという展開が私は好きではありませんでした。
好きではありませんでしたが、人の人生の中で、本気で人を好きになって、その人と少しでも心と体を通わせたという経験があるということと、全く何もない人生のまま終わるのとを比べたら、例え騙されたのだとしても、オールドマンは本気で彼女を好きになった人生を選ぶのかもしれないと思いました。この先二度と誰とも恋をしなかったとしても、オールドマンはあの一瞬の恋を糧に生きて行けるのかもしれません。
ジブリの夏。今回も里帰り中に姉に息子を預けて劇場で観てきました。今から書く内容はネタばれが多分含まれていますので、観る予定の方は読まないで下さい。
アリエッティから二回目の米林監督。どうしても宮崎駿監督と比べてしまって申し訳ないですが、そんなの米林さんだって分かってると思います。比べられるのは当たり前ですよね。分かってて、自分は自分のやりかたでやっていきたいんですよね。がんばれー!と、応援しておいて、言いたいことが色々あります。
脇役について、、、。「さやか」は好きでした。宮崎さんの名前を出しまくって申し訳ないですが、宮崎さんの作る映画は、脇役もみんな主役をはれるくらいに魅力を私は感じます。たとえ悪役でも、本当に「いや~なかんじ」がない。全員なぜか品を感じるのです。でも、米林さんの映画には「地味にいやなかんじの人」がけっこう出てくる。アリエッティではあの「お手伝いさん」がいや~な感じがしました。「マーニー」にはいっぱい「いやなひと」が出てきました。「ばあや」「双子のお手伝いさん」、そして私にはアンナの保護者の「頼子」さんも妙にいや~な感じでした。「いいひと」として出てきているはずなんですが、あの下がった眉毛、心配しつづけるおろおろした声。アンナでなくても心を閉ざしたくなります。また松嶋菜々子の声が頼子さんの顔と全く合っていなくて、違和感がありすぎて、へんでした。それを全部狙っているのだとしたら大成功ですが。さらに太ったおせっかいな女性が二人も出てくるんですが、二人出てくるんだからもうちょっとお互いに個性を出すとか、、、したらいいのになあとかちょろちょろと思いました。
といっても今回の話は決して明るい話ではないですから、いやな脇役がたくさん出て来てもしょうがないかもしれません。ヒロインも、ジブリ史上最も暗いです。ある意味リアルです。リアルな現代っ子。ナウシカみたいな少女は現実にはおりません。ただ、みんなジブリのヒロインにそんな「嫌なリアル」を求めているのか?宮崎さんは、私たちが観たいヒロインを生み出せる。実際にはいるはずがない完璧なヒーローやヒロインでも、それを見せてくれて、胸を熱くさせてくれるのが宮崎さんの仕事なのだと思う。
でも孤独だと思って生きてきたアンナが、自分と血の繋がりのある人間との固い絆を感じる事ができて、それを支えに前を向いて生きていくことができるようになる。その、派手ではないけれど、すごく大切な事を、生きていく理由とか生きていく力になる出来事を、たったひとつのその出来事を丁寧に描いているのが、とてもよかったと思います。
米林さんが「僕は宮崎さんのように映画一本で世界を変えようなんて思っていない。ただ、二人の巨匠の後にもう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。この映画を観に来てくれる「杏奈」や「マーニー」の横に座り、そっと寄りそうような映画を作りたい。」とおっしゃっています。本当にその言葉の通りだと思いました。米林さんは、派手ではなくても、そっと手を握ってくれるようなものを作りたいのだなあと。この映画をそっと心に灯して生きていけるようになる子がいるような気がする。宮崎監督は宮崎監督のやり方で、米林監督は米林監督のやり方で、映画を作るだけのことなんだろうな。
三重滞在中、したかったこと。それは映画を観る事。ジブリだけはなんとしても映画館で観るというマイルール。8年の沈黙を破り、高畑監督が挑んだかぐや姫の物語を観るべく、われは息子を再び姉に託したのだった(大げさ)。
私の映画評は、突然予告無くネタバレをするのでまだ観ていなくて観るつもりの方は、読まない方がいいです。
CMであれほどに斬新な映像を見せられ、非常にこの「かぐや姫の物語」に期待していました。特にすごい剣幕でかぐや姫が夜に駆け抜けて行くシーンね。あれには度肝抜かれました。「いさおちゃん、やったなあ!」と、心の中で親戚のおっちゃんみたいに叫びましたよ。「ホーホケキョ、となりのやまだくん」の進化版という感じもしましたが、当時私は中学生で、中学生はあんまり「淡い感じ」の斬新な映画に興味はなかったんですね。やっぱこう、ぱきーっと、はっきりとしたアニメが観たかったんですね。だから、観なかった。そいでもいさおちゃんは、あきらめずに「淡い」を今回もやりきったんだなあと、単純にすごい!と思いました。でもきっと、この人と仕事をするのは相当ストレスがかかるんだろうなとも想像しましたよ(笑)。
内容はですね、ずばり、我々の知る「かぐや姫」です。とんでもねえ展開とかは特に無いです。敢えて言うと、捨丸兄ちゃんという少年とのロマンスが登場するという所でしょうか。「すべての謎がとけた!」とかいうことも、特に無いです。「いや〜、不思議だよねえ。神秘神秘。」という印象で映画館を出て来ました。
でも、映像がやはり観ていて美しく、それだけで価値ある物だと思います。そして、「おおお!こんな表現!」と驚くような表現もたくさん出て来ます。例えば赤ちゃんのシーンでも、胸がざわざわするくらい赤ちゃんをかわいらしく、丁寧に、描いています。人が泣くシーンでも、なんか、見た事ないような、なんともいえない緊張感があります。「私達が見た事のある表現」ではなく、「今までとは違う表現にしよう。したい。」という高畑さんの想いが詰まっているように感じました。小さなシーンの一つ一つを、どれほどに大切に作ってきたかが画面中に溢れています。
「おもひでぽろぽろ」でも「平成たぬき合戦ぽんぽこ」でも「アルプスの少女ハイジ」でも、高畑さんは常に「自然とともにあれ」のようなテーマがあるように思います。今回のかぐや姫でも、虚飾に満ちた都会の生活をすることでかぐや姫は病んで行きます。あまり多くは語らない高畑さんですが、自然を求め、自然を愛しながらも都会に住んでこうしてアニメを作っている自分自身についても色々考えちまってるんやないかと、私は勝手にいさおちゃんの心中を心配したのでありました。
ともかく、こうして日本のアニメに革新をもたらし続けている高畑監督は、やはり日本にとってかけがえのない存在だと思います。
乳腺炎と乳飲み子抱えて何映画観に行ってんだと言われそうですが、もう、東京に行ったら映画なんて絶対に観に行けないと思って、母に頼み込んで息子を託し、やっとの想いでジブリの最新作を一人で観に行って参りました。途中で乳が張って垂れて来ましたが、乳を垂らしながら観ました。ジブリを一人で観に行く人は本気だよ。何が本気ってよく分からんけど、本気なんだぜ。
だって、久しぶりの宮崎駿監督だよ。そんでもって最後かもしれないとかまで言ってんだよ。最後じゃないと言ってくれ!でも「もののけ姫」のとき、「最後」とか言ってたから多分大丈夫。あと10作品は作ってほしい。私より長生きしてほしい。
主人公の二郎の声を、エヴァンゲリオンの庵野秀明さんがやってるんですが、それがとてもよかった!「耳をすませば」の雫の父役を立花隆さんがやっていた声が私はジブリ作品の声の中で一番好きだったんですが、それを上回る素敵さでした。あの「くぐもり」感がたまらなく素敵。
ジブリに出てくる男性主人公に、女性なら一度は恋をしたことがおありだと思いますが(え?そんなことはない?あるでしょ。)今までは「耳をすませば」のせいじ君がNo.1だったのですが、もう本日より二郎に首ったけです。二郎首位に躍り出る。あのぼさぼさ頭に瓶底メガネのぼんやりとしたインテリ感がかっこいいです。ドイツ語もフランス語もしゃべれちゃうの。女性を助けて名前も言わずに立ち去るなんて、時代劇の風来坊しかそんなことしないよ!っていいたくなるけど、素敵。肩の力が抜けてる所が素敵。なのに偉業をなしとげちゃうなんて素敵。あの風貌に、本当に庵野さんの声がマッチしている。映画って素敵な作り物だなあと思う。線を引いて、色をつけて、声を吹き込んで、新しい人間を作る。スクリーンの中でそれは生きている。
空を飛ぶシーン、風でスカートや髪の毛がなびくシーン、食べ物を食べるシーン、そして鉛筆で紙に字を書くシーン、全てが宮崎監督らしい。好きなシーンがいっぱいです。鼻の異常にでかい人物もちゃんと出て来てました。
宮崎監督は飛行機が大好きだけど、飛行機が多く出てくる作品にはいつも同時に戦争のシーンもある。でも戦争を描きたい訳じゃない。美しい飛行機を作った男の人の生き方を描いている。二郎という人間に、宮崎監督は想いをたくさんのせている。