三重滞在中、したかったこと。それは映画を観る事。ジブリだけはなんとしても映画館で観るというマイルール。8年の沈黙を破り、高畑監督が挑んだかぐや姫の物語を観るべく、われは息子を再び姉に託したのだった(大げさ)。
私の映画評は、突然予告無くネタバレをするのでまだ観ていなくて観るつもりの方は、読まない方がいいです。
CMであれほどに斬新な映像を見せられ、非常にこの「かぐや姫の物語」に期待していました。特にすごい剣幕でかぐや姫が夜に駆け抜けて行くシーンね。あれには度肝抜かれました。「いさおちゃん、やったなあ!」と、心の中で親戚のおっちゃんみたいに叫びましたよ。「ホーホケキョ、となりのやまだくん」の進化版という感じもしましたが、当時私は中学生で、中学生はあんまり「淡い感じ」の斬新な映画に興味はなかったんですね。やっぱこう、ぱきーっと、はっきりとしたアニメが観たかったんですね。だから、観なかった。そいでもいさおちゃんは、あきらめずに「淡い」を今回もやりきったんだなあと、単純にすごい!と思いました。でもきっと、この人と仕事をするのは相当ストレスがかかるんだろうなとも想像しましたよ(笑)。
内容はですね、ずばり、我々の知る「かぐや姫」です。とんでもねえ展開とかは特に無いです。敢えて言うと、捨丸兄ちゃんという少年とのロマンスが登場するという所でしょうか。「すべての謎がとけた!」とかいうことも、特に無いです。「いや〜、不思議だよねえ。神秘神秘。」という印象で映画館を出て来ました。
でも、映像がやはり観ていて美しく、それだけで価値ある物だと思います。そして、「おおお!こんな表現!」と驚くような表現もたくさん出て来ます。例えば赤ちゃんのシーンでも、胸がざわざわするくらい赤ちゃんをかわいらしく、丁寧に、描いています。人が泣くシーンでも、なんか、見た事ないような、なんともいえない緊張感があります。「私達が見た事のある表現」ではなく、「今までとは違う表現にしよう。したい。」という高畑さんの想いが詰まっているように感じました。小さなシーンの一つ一つを、どれほどに大切に作ってきたかが画面中に溢れています。
「おもひでぽろぽろ」でも「平成たぬき合戦ぽんぽこ」でも「アルプスの少女ハイジ」でも、高畑さんは常に「自然とともにあれ」のようなテーマがあるように思います。今回のかぐや姫でも、虚飾に満ちた都会の生活をすることでかぐや姫は病んで行きます。あまり多くは語らない高畑さんですが、自然を求め、自然を愛しながらも都会に住んでこうしてアニメを作っている自分自身についても色々考えちまってるんやないかと、私は勝手にいさおちゃんの心中を心配したのでありました。
ともかく、こうして日本のアニメに革新をもたらし続けている高畑監督は、やはり日本にとってかけがえのない存在だと思います。