ジブリの夏。今回も里帰り中に姉に息子を預けて劇場で観てきました。今から書く内容はネタばれが多分含まれていますので、観る予定の方は読まないで下さい。
アリエッティから二回目の米林監督。どうしても宮崎駿監督と比べてしまって申し訳ないですが、そんなの米林さんだって分かってると思います。比べられるのは当たり前ですよね。分かってて、自分は自分のやりかたでやっていきたいんですよね。がんばれー!と、応援しておいて、言いたいことが色々あります。
脇役について、、、。「さやか」は好きでした。宮崎さんの名前を出しまくって申し訳ないですが、宮崎さんの作る映画は、脇役もみんな主役をはれるくらいに魅力を私は感じます。たとえ悪役でも、本当に「いや~なかんじ」がない。全員なぜか品を感じるのです。でも、米林さんの映画には「地味にいやなかんじの人」がけっこう出てくる。アリエッティではあの「お手伝いさん」がいや~な感じがしました。「マーニー」にはいっぱい「いやなひと」が出てきました。「ばあや」「双子のお手伝いさん」、そして私にはアンナの保護者の「頼子」さんも妙にいや~な感じでした。「いいひと」として出てきているはずなんですが、あの下がった眉毛、心配しつづけるおろおろした声。アンナでなくても心を閉ざしたくなります。また松嶋菜々子の声が頼子さんの顔と全く合っていなくて、違和感がありすぎて、へんでした。それを全部狙っているのだとしたら大成功ですが。さらに太ったおせっかいな女性が二人も出てくるんですが、二人出てくるんだからもうちょっとお互いに個性を出すとか、、、したらいいのになあとかちょろちょろと思いました。
といっても今回の話は決して明るい話ではないですから、いやな脇役がたくさん出て来てもしょうがないかもしれません。ヒロインも、ジブリ史上最も暗いです。ある意味リアルです。リアルな現代っ子。ナウシカみたいな少女は現実にはおりません。ただ、みんなジブリのヒロインにそんな「嫌なリアル」を求めているのか?宮崎さんは、私たちが観たいヒロインを生み出せる。実際にはいるはずがない完璧なヒーローやヒロインでも、それを見せてくれて、胸を熱くさせてくれるのが宮崎さんの仕事なのだと思う。
でも孤独だと思って生きてきたアンナが、自分と血の繋がりのある人間との固い絆を感じる事ができて、それを支えに前を向いて生きていくことができるようになる。その、派手ではないけれど、すごく大切な事を、生きていく理由とか生きていく力になる出来事を、たったひとつのその出来事を丁寧に描いているのが、とてもよかったと思います。
米林さんが「僕は宮崎さんのように映画一本で世界を変えようなんて思っていない。ただ、二人の巨匠の後にもう一度、子どものためのスタジオジブリ作品を作りたい。この映画を観に来てくれる「杏奈」や「マーニー」の横に座り、そっと寄りそうような映画を作りたい。」とおっしゃっています。本当にその言葉の通りだと思いました。米林さんは、派手ではなくても、そっと手を握ってくれるようなものを作りたいのだなあと。この映画をそっと心に灯して生きていけるようになる子がいるような気がする。宮崎監督は宮崎監督のやり方で、米林監督は米林監督のやり方で、映画を作るだけのことなんだろうな。