生まれて初めて一人で揚げ物をした。エビとアスパラのかき揚げ。今日は揚げ物記念日なのだ。サラダ記念日じゃなくってね、揚げ物記念日って書くと全くさわやかさがなくなるもだな。
粉と水のバランスが分からない、そんな私の揚げ物記念日。
かき揚げがバラバラ事件だ、揚げ物記念日。
廃油の行き場が未確定、オイルポットを検索だ、揚げ物記念日。
全く俵さんにはなれないけども、案外美味しくできて一安心でした。
思えば今まで母が揚げ物をしている最中に、じ〜っと見ていただけだった。私は油がこわいのだ。なぜなら母の手には「てんぷらを揚げているときに手に油がとんでできたシミ」なるものがぽちぽちとあって、母のいかつい手をよりいかつく見せている。さらには、揚げ物を揚げているとき、やっぱりなんか危険地帯的な雰囲気がそこから漂うし、よく油がはねているのも見る。私は母になったら、このような恐ろしい熱さと後遺症に怯えて揚げ物をしなければならないのかと思うと、私を揚げ物から遠ざけていた。揚げ物はあれだけ美味しいのだから、やはりそれなりにリスクが伴うのだろう。
夫は揚げ物が好きだけど、どうにか揚げ物から意識を遠ざけるまじないでもかけようと思っていたら、テレビで枝元なほみさんが穏やかな笑顔をたたえてかき揚げを揚げていたのでやってみようと前向きになれた。揚げ物の救世主だ。あんなに穏やかに揚げ物ができるものかと思った、うちの母がやはり何かおかしいのかもしれない。
コツもしかとメモした。氷水で、片栗粉も加えて、ふむふむ。しかし私はどうしても「計る」という行為が好きになれずに、やはり今回も目分量で勝負した。これのお陰で「コツ」の威力をかき消すかもしれないのに、なぜか計るのが嫌なのだ。計量スプーンとか大嫌いなのだ。小さい頃はフルーチェを作る時だけ計量カップを使用していたけど、それ以来使ってない。
だからか知らないけど、フライパンの中で(かき揚げはフライパンの方がいいんだってさ)かき揚げがバラバラになった。揚げながら憂鬱になった。「ほら見たことか、だから揚げ物は嫌や言うたやろ」と呪詛しながら、バラバラになったエビをすくいあげてひっつけたりした。工作だ。
さぞかしマズいだろうと思ったら、かき揚げの味がちゃんとした。夫は「バラバラだけど、味はかき揚げだね。粉が少なかったんじゃないの」と言った。私が心の中で思っていたことをそのまま言葉にされた。でも私としては80点なのだ。自分にはいつも甘いから。