昨日姉ちゃんから電話がかかってきて、「私暇やねんけど。明日あんたんとこ行っていい?」と告げた。5月にスペインへ留学する予定の姉は、3月に5年勤めた高校の英語教師を辞めて、今人生で一番時間があるらしかった。
そして最近まで散々色んな場所へ暇な間に旅行した挙げ句、「お金そんなに使ったらあかんやん?」と気付いたらしく、暇ついでに私の新居へ今日日帰りで現れた。駅に私が迎えに行くと、相変わらずの「コジマ電気の太陽」と見紛うばかりにテカりながらにやついていた。
姉は仕事に関しては勤勉だけど、三重の実家にいる時は着膨れた団子みたいにソファに転がっている。母から今朝「そっちに団子が転がっていったからよろしくね。」と電話があった。
姉はアメリカに留学していた頃は、年中トレーナーにGパンにきゃべつみたいな頭だったけど、日本に帰って来て勤め始めたらとてもスーツが似合うようになって、普段着もきれいめでおしゃれになった。でも、靴だけはなぜかいつもボロボロなのだ。もちろん最初はきれいな靴を買うんだけども、彼女の歩行距離がいつも莫大すぎて一瞬で靴がボロボロになるのだった。父に「今すぐその靴を捨てろ」と言われているのをたまに耳にする。そしていつも足は豆だらけで、よじれた絆創膏が必死に姉の足にからみついている。会うといつも最近出来たひどい豆の武勇伝をしてくれる。どの足の指もウルトラマンの頭のような形をしているのだ。
必要に迫られて歩いているのかといえばそういう訳でもなく、彼女は歩くのが小さい頃から好きなのだった。中学生の頃から、「あそこからここまで歩いた」とぼそっと告げては家族を驚愕させてきたのだ。「姉ちゃんがまた歩行距離記録を更新した!」とよく言ったものだ。だから私は今日うちに来てくれた姉と、延々うちの近所を散歩しようと決めていた。姉にしたらハナクソみたいな距離だけどさ。
お昼は近所にある有名なオムライス屋さんへ。ここの看板のフォントは非常に店の雰囲気と不釣り合いで、私はそれがとても気になっていたのだけど、姉もそれに真っ先に気付いた。注目する点は似ているのだ。
昼ご飯を食べた後、「近くにアピタ(大型スーパー)があるよ」と私が言うと、「アピタには絶対サーティーワンアイスクリームがあるはずや」と姉が言うので、サーティーワンが大好きな私達としては、デザートはそこへ行く事に自然と決まった。彼女はアイスクリーム屋の場所はなぜかよく知っている。
アピタに歩いて行くと、本当にサーティーワンがあった。姉は好きなフレーバーというのはこれといってなく、いつも新しいフレーバーのみを試す。ただしシャーベットは除く。アイスに爽やかさは求めていないらしい。そしていつもダブルを頼む。サーティーワンのアイスクリームのフレーバー名は長くて難しいカタカナが多いけど、いつもどもりがちな姉は、アイスのフレーバー名を言う時だけは淀みが無くスラスラ言えるのだった。「ジャモカアーモンドファッジ」とかね、、、。
散歩している間色んな話をした。勤めている間はとにかく毎日忙しそうだったので、平日に私と二人でのんびり散歩しているなんて奇跡のようだと話した。姉に、今幸せかと聞くと「うん。」と嬉しそうに言っていた。
幸せとはこういう事だ、ととても感じた日だった。姉を駅まで見送ったら、少し寂しかったけど、幸せの帯がず〜〜〜〜〜っと私に巻き付いていた。