カメムシを知っていますか?くっさい虫です。秋口から冬にかけてあらゆる場所で見かけます。ヤングなやつは緑色で初々しさを醸し出していますが、アダルトなやつは茶色く、けっこう知恵者です。東京に住んでいた時は全然見かけなかったのですが、田舎の人々はカメムシとは濃厚な付き合いをせざるをえません。振り返ればやつがいる、的な存在なのです。カメムシの臭いは、他の物に例えようのない、カメムシの匂いです。でも敢えて何かに例えるなら、きっとよく効く薬草はこんな匂いがするのだろうな、という匂いです。
子ども達は教室にカメムシが出ると大騒ぎします。そして、自分の今までのカメムシ退治の武勇伝を誇らしげに話だします。オレんちはガムテープで一気取りだぜ、うちなんて瓶詰め攻撃だぜよ、とか家の数だけカメムシ退治の話があるのです。カメムシが一匹登場しただけで、みんなが騒いで授業ができなくなるので、教師泣かせの虫かもしれませんね。誰かが踏みつぶそう物ならもうその日一日美術室は呪われた教室のような扱いです。
ちなみに我が家ではティッシュでカメムシをつつんで、トイレに一緒に流します。カメムシの為だけにトイレの水を流すのはもったいないので、誰かがトイレに行くついでに一緒に流してもらいます。なのでそれまでカメムシが包んだティッシュから逃げ出さぬようにティッシュのさきっちょにアロエクリームの瓶を置いて逃げ出さないようにしておきます。(ちなみにこれはアロエクリームでなくてもいいです。当たり前ですが。トイレに置いてあるちょっと重いものであれば何でもいい訳です。)
トイレに行こうと思って、扉を開けたときにこのティッシュの包みがあると「やれやれ、私に当たったか」と思います。大量捕獲の時には3個くらいカメムシ包みが置いてあって、責任の重さを感じます。
それと同時に、生活することの、説明のつかないような滑稽な風景に私は幸せな気持ちにもなります。
カメムシは、振り返ったり、後ずさったり、寝ている振りをしたり、突然全力疾走したり、気分が良いと飛んだり、怒ると臭い臭い匂いを噴射させたり、「誰かがカメムシを踏んだ」と人を疑心暗鬼にさせたりするので、憎みきれない生き物です。