とてもよく晴れた秋の日、オグと奈良にある曽爾高原へと行って来ました。
曽爾高原は、実は一度、私が中学1年生の五月に行った事がありました。新入生に「規律ある生活と5分前行動」を徹底させるために、私の母校では毎年5月に、過酷な3日間合宿をさせる習わしがあったのでした。私はそのとき、部屋長を任されていました。自分の部屋の生徒が5分前行動をするかどうかは、部屋長の責任ということになっていました。もし遅刻すると、恐ろしいキツネ顔の先生に怒鳴られるのでした。びびりやの私はたったそれだけのことが重圧で便秘になったりしましたが、おかげさまでとても想いで深い合宿となり、今でも「曽爾」と聞くと、ほこりくさい青いジャージで過ごした、ただ怒られるだけの3日間がありありと蘇るのでした。
私にとってはとても重要な3日間だったと思うのでした。
そこうしていたら、いつのまにか29歳になっていて、それなりに規律を守り、時には道を外れたりしながら再び曽爾高原を訪れる機会が巡って来たのでした。
最近の「山ガール」旋風にのって、高原はおしゃれなレギンスと最新のアウトドアグッズに身を包んだ若いもんから3歳児から乳飲み子から、濃い化粧で日傘をさしたおばちゃまやら、でっかいカメラをぶら下げたおじさんやら、グルコサミン漬けであろう老人会から、なぜかインターナショナルサークルの外人さんまで溢れかえっていました。万人を受け入れる曽爾高原。人が居なかったら、そうとう寂しげなこのススキが群生する高原に、めちゃくちゃ多種多様な人々が集っています。ハイヒールで手ぶらのギャルがいるかと思えば、首をかしげるほどの重装備で立ち向かう人もいて、その光景が異様で、なんだかすごくおもしろかった。
私とオグは、ジーパンにスニーカーにリュックサックというつまらないくらいに常識的な格好で登り、汗をかいたら一枚脱ぎ、ちょっと寒いと軍手をつけ、お弁当を広げ、ウェットティッシュで手を拭き、困る事は何もなく「ああ、あのとき曽爾合宿で鍛えられたから、私はこんなに準備よくとどこおりなくうまくいくのかしら?やっぱりあの3日間があってよかったわ。」と、つらかったあの3日間に想いをはせたりしていました。
なんとなく覚えてるよ、この急斜面。甘く見てるとそれなりにしんどい、でもがんばって行ってみようかなと思わせるこの急斜面。大人になってから見ると、こんなにも「ちょうどいい」山だったのか〜。