私の父はマジシャンです。小学生くらいのころからマジックをしてきたそうです。母は、50歳を過ぎて、やっと津のマジッククラブに入りました。「マジックなんかするもんか」と頑張っていた(?)母も、父のマジックの手伝いをすることがあまりに多くなって来て入らざるをえなくなったようです。私と姉は、小さい頃から全くマジックに興味がなく、家中に転がるマジック道具を見ても「また散らかしとる」くらいにしか思ってきませんでした。
家族が決してマジックに積極的ではなく、むしろ疎まれながらも、父はマジックに打ち込んできました。私や母、姉はマジックは好きでなくとも、父がマジックの世界大会などに行く時は嬉々としてついていき、これまで様々な楽しい素晴らしい経験もさせてもらってきています。
ICMコンベンションは、15年前から年1回のペースで父とその友人主催(多分)で開催してきたコンベンションです。私は全く詳しい事は知りません。知りません、が、三重の伊勢、志摩、鳥羽あたりのリゾートホテルを借りて結構大々的にやるので、旅行気分でちょこちょこ参加してきました。今回は伊勢の宝生苑という和風ホテルで開催され、私と息子、姉夫婦、祖母も参加し、姉の旦那さんのご家族まで遠路はるばるやってきてくれました。
その夜の宴会の模様。総勢何人か知らんけど、ずらーっと。大広間貸し切っての夕飯。ここではマジックしません。宴会芸とかじゃありません。また別の舞台で、結構真剣にするんです。審査員とかいますから。父は真っ白なスーツに赤い蝶ネクタイという冗談みたいな格好でうろうろしています。息子はそのじいじを見て嬉しくてたまらんようでした。
年によってはヨーロッパなどからゲストマジシャンを呼んだりしていますが、最近はやはりアジアのマジシャンが多いです。韓国と中国の方がとても多いですね。当たり前ですがマジックの世界でも流行などがめまぐるしく変わっておるようで、カードを使うしっとりとしたものが流行るときもあれば、物語の世界をマジックで表現するものもあり、、、それでもマジックは全世界でこれほどに愛されているのだなあ、という事実。それに、私なんかは驚いたりするのです。
年一回、このような外国の方も巻き込んでの大会を運営していくというのは、並大抵ではないです。父が代表みたいな感じですが、その裏方をすべて回してくれているのが、父が講師を務めているマジッククラブのメンバーの方々です。何教室かあるようで、その方々がボランティアですべてしてくれています。これはすごいことなんです。それに一年費やしているといっても過言ではないくらい、大変みたいです。父も母も連日のミーティングやらで、この時期はずっとふらふらです。メンバーの中でも意見の食い違いなどで諍いがおきたり、メンバーが脱退したり、人間だもの状態で色々あるようです。
私は「そんなしんどいのになんでやるんやろう」とか思ってしまうんですが、そういうことじゃないんですね。しんどくても、やるんです。多くのマジック好きの人々をを繋げ、広げ、温め、そしてまた次に繋げたいという想いがあるんでしょうね。笑って、びっくりして、感心して、数分間のショーの間、人々は目を輝かせている。その瞬間が好きで、大事なんでしょうね。
コンベンションが終わり、ぼろぞうきんのようにふらふらのぼさぼさになった両親ですが、その数日後には、父は新しい会場を探しに行っていました。
うちの親がんばるなあ。