一日の締めくくりに、最大のストレスイベントがある。それが息子の歯を磨く事だ。歯ブラシを台所から私が持ってくると、息子は慌てて私から遠ざかって行く。嫌がる息子を羽交い締めにし、私の股に手足を挟み込んで動けないようにして、泣き叫ぶ息子の口をこじあけて、磨く。毎日です。泣き叫ぶ息子も嫌だろうが、磨く私だってどんだけ嫌か。でも虫歯になったらもっと嫌でしょう。
私の一番最初の虫歯の思い出は、確か4歳くらいだったと思う。痛すぎて、それを紛らわせたいから、ずーっとずーっとでんぐり返りを布団の上でやっていた。でも歯医者に行くのは恐ろしすぎて、母にばれないように「痛い」とは言えなかった。結局ますますひどくなって、歯医者に行く事になるのだけど。
10歳で歯の矯正に行くまでは、かなり虫歯があったと思う。歯並びが悪かったし、面倒くさがりだったから、私の怠惰な性格が歯に出ていた。矯正ももちろん嫌がったが、母が変な顔をして「こんな顔になるよ」と脅してきたので、恐怖におののきながら10歳から20歳くらいまで矯正歯科に通った。ある日は学校を早引きして、せっせとバスに乗り、一人で通い続けた。歯を抜くのが抜群にうまい歯医者さんに別に通い、一日に2本も歯を抜いたこともある。歯磨きを毎日3回するように言われたので、私はそれ以来20年以上一日最低3回は歯を磨く生活を続けている。おかげで、矯正以来歯のトラブルに悩まされたことはないから、あのとき変な顔を披露して、私に矯正をさせてくれた母に感謝している。
今は、自分の歯より息子の歯が心配でたまらない。1歳6ヶ月歯科検診に行って、「今は虫歯はないけど、その生活習慣じゃ、けっこう危ないかも」みたいなことを言われて以来、息子の口腔ケアグッズは増える一方。それまではお菓子もよくあげていたので、それを夜の歯磨き前の一回だけにして、息子がほしがらないように私もお菓子を控えている。夜間にあげる母乳も歯にはあまり良くないと言われ、断乳するか迷っている。
「心を鬼にして」とはよく言うけど、本当に、泣き叫んでいる子を羽交い締めにして押さえつけて歯をこじあけているときは「私は鬼じゃ」と言い聞かせて、ゴシュゴシュ磨いています。