マジック漬けの日々が続く中、津のマジッククラブから参加していた素敵な4人のおばさま達(最高齢は70歳)が隣町リバプールへ行くという噂を聞きつけた。なんじゃとー!わしらも行くべさと私と母。そんなミセス達を心配してオラも行くべよと父も参加。
隣町と言っても電車で1時間半くらいだからけっこうな小旅行。いざイギリスの鉄道へ!電車からの景色は、羊が草をもぐついている牧歌的な風景が続く。今度生まれ変わったらイギリスで草を食む羊になるのもいいぞと思う。
景色を楽しもうと思っていたらあまりにも野原が続くので、いつの間にかみんないびきをかいて寝ていた。そうしたらリバプールへ着いた。上の写真はリバプールの駅。ブラックプールより遥かに大きく栄えている。頻尿がつきもののミセス達は着いて早々、トイレを探す。そしたらなんとトイレが有料で、トイレを目の前に大騒ぎする私達。30ペンスがどれだどれだと大混乱。
周囲の温かい援助のもと、なんとかみなはすっきりとした表情で市街へ。リバプールは、言わずと知れたビートルズの生誕地。ビートルズミュージアムやショップが軒を連ねる。でも別におばさま達は、ビートルズが目当てでリバプールへ来た訳でもなく、リバプールの栄えた街でショッピングしたいねーなんて言ってたのです。でも私らはビートルズ目当ての父を連れて来ていた。英語が堪能なのは父だけ。私らがぼーっとしている間に、いつの間にか、父がビートルズの生家を巡るツアーに申し込んでいた。え?聞いてないよ。でも父をマジックの師と仰ぐおばさま達は文句も言わず、ツアーのタクシーが来るのをじっと待つ。
待つ事1時間半(長くねーか?)。退屈度がマックスのおばさま達は、誰でもできる卓球台を見つける。リバプールの青い空の下、卓球に励むおばさま達と父。だんだんとアジア人の卓球を見学しに色んな人が周囲を囲み始める。アジア人だからといって別にみんながみんな卓球が上手い訳やないのやで。転げ回る父を見て、多分それを知ってくれたはずだ。
退屈で私が気を失いかけたその時、やっとタクシーが2台来てくれた。運転手は気のいいテッドとニック(私が勝手に名付けた)。テッドのタクシーには私と父と母。ニックのタクシーにはおばさま達4人。タクシー内のBGMは当然ビートルズ。陽気に口ずさむテッドと父。父はわざわざ言う程多分ビートルズを好きという訳じゃないと思うけどな。父の世代の人はみんな、そこそこ知ってて割と好きという感じなのではないか。母は「ママも好きやにー。」と言いながら、何一つ口ずさまず。
ここがジョン・レノンの育った家。他にももちろんポール・マッカートニーやペニー・レイン、とにかく全員の生家と、ゆかりの地を訪れ、その家の前で写真を撮った。テッドがちゃんと色々解説してくれているのに、私はほとんど英語が聞き取れず、とてもなんだか自分が情けなかった。今まであんまり思った事はなかったけど、今までで一番英語ができたらどんなにいいだろうと思った。テッドも、父以外のミセス達がぽかーんとしているので、もうほとんど父に向けてしか話していない。
しかも、最後にポール・マッカートニーの家の前で、おばさまの一人が「あら、まだそのポールさんっていう人がここに住んでいらっしゃるの?」とつぶやいたのだった、、、。ああ!!全然分かっていない人が一名いたのだ。(御年70過ぎ)私はなんだかショックであった。彼女にしたら、今まで何だか知らないけど、突然タクシーを何度も下ろされ、小さな家の前でみんなで写真を撮った旅、だったのである。そんな話あるか。私は妙に彼女に申し訳ない気持ちになった。父はもっとちゃんと説明をするべきではなかったのだろうかと。
と、私がもやもやしていたらそのおばさまが「私、みんなでこうやってイギリスに居るだけで本当に嬉しい。」というような事をおっしゃっていた。
そうか、そうなんだ。そうだよな。70歳過ぎて、こうして日本からマジック仲間とイギリスへきたんだもの。それだけですごい事だ。80歳を過ぎて参加されていたおじいさんも、一生懸命だった。「みんなに迷惑かけないように頑張る」とおっしゃっていた。そのおじいさんに大英博物館のツアー中、椅子をすすめたら「一旦座ったら立ち上がれなくなるから、いいです。」と言った。本当にマジックが好きで、参加したんだなあ。
そうして、ビートルズツアーだけで、あっという間に帰る時間になってしまった。おばさまの一人が「あ〜あ、ショッピングもしたかったな〜。」と言っていた。私もだよー!!帰りの電車は大混雑で、そんな中、私達は買って来たイチゴタルトを全員で食べた。名残惜しいくらいがちょうどいいのだ。