年に3回くらいだけれど、母はおやつを作る。近頃はもっぱらチーズケーキだ。
昔から思っていたけど、母は「お菓子用の道具」というものに全然頼らない。いつもその辺にあったものを適当に使うので、制作過程がすごくかっこ悪い。写真のチーズケーキも、ケーキの型がないので周りをそばちょこが囲んでいる。ドーナツとかも、ペットボトルのフタとかでかさかさ作る。そしてすごく焦げたりする。だから結局、出来上がったあとも割とかっこわるい。
じゃあ味はきっとすごくいいのだろうと言いたい所だけど、ごくたまに悲しい味になったりする。私が東京に住んでいた時に、誕生日にこのチーズケーキが送られて来た事があって、ルームシェアしていた友達とワクワクして食べた。そしたら焼き魚の味がしたのだった。友達も私もとても驚いた、焼き魚の味のするチーズケーキというのは、すごく残念なのだ!しかもなぜか2本もそのときは送られて来て、友達ももう誰も食べてくれないし、私はその二本のチーズケーキを何日もかけて食べることになった。
その事を母に告げると「あ〜!そういえば直前に魚焼いてた!!」と嬉しそうに謎解きをしていた。
しかしかつて1度、母にしては奇跡のようにかっこいいお菓子を作った事があった。確か私が小学校高学年くらいだったはず。その日突然母は「ママは今からクレープシュゼットを作るからね。」といって、今まで1度も使ったことのない銅鍋でオレンジソースを作り、クレープをささっと焼いて、私の前に差し出した。そのクレープはとても美味しくておしゃれだったのだ。私は子どもながらに母はどうしてしまったのだろうと困惑した記憶がある。
私はその日の感動を今でも忘れない。本当にそれ一回きりだったのだから。