虫が大嫌いな人、ごめんなさい。これはここ最近のうちの玄関です。
すぐ隣にある大きな桜の木から毛虫がどんどんどんどん、うちの家の壁に登り着いて、うちの郵便ポストに登り着いて、うちの玄関の扉の前に徒党を組んで押し寄せてきて、いつも忙しくて髪の毛を振り乱して朝出て行く働き者のうちの母なんかは、毛虫に構っている暇なんてないもんだからいつも二、三匹いつのまにか踏み殺して、叫びながらそれでも出勤しています。
ところが、この子達は、夕方になるとどこかへ消えている。どこへ?
朝から昼間にかけて、郵便屋さんがのけぞるくらいにうちの玄関周りをはいちらかしているこの毛虫が、夜にはどこにもいない。本当にどこへいくの?
私が平和な国の王様であったなら、日がな一日この毛虫をながめて行方を突き止める事ができるのですが、もしくは昆虫博士で、虫の生態を探る事が仕事であったなら。
残念ながら、不思議な事があっても無視して洗濯物を干す時間を確保したいと思うくらい大人になってしまった私は、ただそのことを母に「今日の不思議」として報告するくらいの芸当しか持ってはいないのでした。
ほらね?すごいでしょ?階段を登ったり、たまに壁から力つきて落ちたりしてどこかへ行ってしまう。
「こんなにいるんだから蜘蛛に一匹ごちそうしてあげよう」と思い立って、目の前にあった大きな蜘蛛のいる蜘蛛の巣へ毛虫を一匹ひっかけてやりましたが、大きく体をゆすり毛虫が大暴れ。見事に巣を破って、ドクダミの花の中へ落ちて行きました。