栗沢まりさんのデビュー作「15歳、ぬけがら」という小説の装丁画を描かせていただきました。講談社児童文学新人賞佳作の作品です。
帯にもありますように、貧困がテーマです。子どもの貧困。日本は深刻ですよね。よくNHKのクローズアップ現代とかNHKスペシャルにもつい最近取り上げられていました。戦後どんどん豊かになってきたはずの日本ですが、今また深刻なんです。NHKスペシャルで井筒監督が「オレらの頃はみんな貧しくて当たり前やったから、そんなこといちいち辛いとか思わなかったけどなあ」とつぶやいておられましたが、貧困を経験した若者が「みんなが貧しいなら辛くないんです。でもみんなが持っていて当然の物を持てない、みんなができることが自分のうちではできない。ということが一番辛い、将来への希望がもてなくなる。」ということなんです。
今回のこの「15歳、ぬけがら」は貧困をテーマにした小説なんですが、かわいそう、というのではないです。なんというか、かっこいいと言った方がいいですね。もちろん辛いシーンもたくさん出てくるのですが、力強く孤高な麻美という主人公をみてほしいです。「ぬけがら」という言葉の意味も、かっこいいんです。自分の未来に思いを馳せる事ができるということが、どれだけ幸福であるかを思った。
児童文学だけれど、大人が読むべき一冊だとも思います。大人にしかできないこともたくさんあるから。