外が雪で妙に霞がかっている自宅。今日は朝からマジシャンの父が、なにやら銀色の玉を浮かせるパフォーマンスに夢中。13日に東京で発表しなければならないとかなんとか。
銀色の玉を浮かせるマジックなんてなんで今更やるんだろう。やめなよ、と私は言いたい。もう珍しくも何ともなかろう。しかも何度も落としている、その度に玉が半分に割れ、悲しそうに修理する父。
父だけではない、母はもう何年も、全くマジックに興味がないにも関わらず無理矢理父のアシスタントとしてショーにかり出されている。その度に意味不明の格好をさせられて、しかも父に怒られている。結婚ってきっと失う物も多いものなのだ。
ひどいときは、姉が小5のときにバレエで着ていたレオタードを着て、変な箱から飛び出なければならないときもあった。あの映像を観たとき、私は言葉を失った。ブルーのピッチピチのレオタードを着て飛び出る母。観客は一体どの部分に驚いたのだろう。
今回はこれです。金ぴかのドレス。これを着たまま探し物をしている母。母が歩くところに金色のラメが落ちて行きます。母は健気です。そうこうしていたら、「シホコ、ちょっと見といてくれ」という声が。どうやら今回は、銀色のボールが浮いた後、母の首も浮いているように見せたらおもしろいんじゃないか、という事を思いついたらしいです。で、上手に首が浮いているように見えるか、見ていてくれということでした。
楽しそうに首を動かしていた母は、また父に怒られていました。「そうじゃない!こうや!こう動くんや!」と。しょんぼりしながらも果敢に挑戦する母。私はいつものように無言でその場を立ち去りました。私は鳩に餌をやる以外はマジックに関してはノータッチです。巻き込まれる訳にはいかないのです。犠牲者は母一人で十分です。
でも、13日はうまくいくといいね。母の為にそう思います。