三重のおばあちゃんちでは、広い庭と田舎の立地を生かして今まで何度となくBBQをしてきました。父の友人や教え子を招いたり、私の友人だったり、その都度参加メンバーは様々ですが、3年に一度はやっています。BBQをやるぞー!となったら、私の両親は一か月前からそわそわし始め、わざわざ肉の予約をしたり、花火を揃えたりとはりきってやってきました。BBQってするとなったら、本当にけっこう大変で、私は面倒くさがりなのと暑がりなのとでいつも食べるだけ食べて、ろくに肉を焼いたことも有りません。
ところが、今回は姉が「BBQやるでな。」と言いだしました。「私がぜーんぶ準備するから。パパやママはなんもせんでいいから。」とのことでした。みんなちょっと「嫌な予感、、、。」と胸騒ぎがしました。すると決めたら、姉はまずテントをネットで購入していました。昼間のBBQなので必要と考えたのでしょう。確かに、今までここでは夕方から始めるBBQしかしたことなかったもんな。
今回のお客様は、滋賀在住の姉の友人さちをちゃんと、さちをちゃんのもうすぐ一歳になる娘のあやなちゃん、さちをちゃんの従妹のさとこちゃんです。私も去年のクリスマスにさちをちゃんちにお邪魔して美味しい手料理をたらふくご馳走になったのでした。
ふと私は「ん?まだ一歳にもなっていない赤ちゃんがいるのに、BBQって大変じゃないかな?しかも真夏に、、、。」とふんわりと思いましたが、姉がはりきってテントまで購入していたので、何となく言いだしにくくそのまま当日になりました。
この日は、、、まさにうだるような暑さ。外で火をたくなど自殺行為。全員が「こ、、、こんな日にBBQ、、。」と生唾を飲み込みました。しかし、後戻りはできません。高らかにBBQ宣言をして肉もテントもとうもろこしだって用意したのです。姉は、姉の優しい旦那様マイマイも動員し、ミャンマーで生き残った日本兵のような格好をさせて、延々と肉を焼かせていました。「私が全部するでな」と豪語していた姉でしたが、やはり父母も汗を流してテントをはったりして朝から健気に手伝っておりました。私は息子が小さいのをいいことに、祖母の家のクーラーのきいた部屋で窓ガラス越しにその様子を眺めていました。さちをちゃん達も到着したばかりで、部屋であやなちゃんにおっぱいを飲ませたりと、平和な時間を過ごしていました。ああ、このままずっと冷房の効いた部屋で涼んでいたい。そう誰もが思っていましたが、体力がバイソンのような姉が炎天下の庭で叫びました。「肉やけたでー!」と。
なんと、その焼けた肉は、クロマニョン人が食べていたようなごつさのスペアリブ。炎天下、テントの下でも猛烈な暑さ、赤子を胸に抱いておそるおそる部屋から出てきたさちおちゃん達、目の前には荒々しい黒こげの肉塊。あやなちゃんは一瞬で汗を吹きだしてしまった。事前に作って置いたサラダは暑さで、温野菜みたいになって、ドロドロ。赤ちゃんを抱いて、スペアリブを食べるのは、至難の技。クーラーボックスのジュースも一瞬でお湯のような液体に。ああ、汗と煙で目もかすんできた。さっさと食べるだけ食べて、涼しい部屋に逃げたい。でも、少し先のテントも無いむき出しの石の上で、日本兵のようなマイマイと、バイソンのような姉がゆでだこのようになって肉を焼いているのに、すぐに部屋に戻る訳にもいかない。
お疲れ様のあやなちゃんの写真。びっくりしたよね、、、。一緒に外で汗だくになっておにぎりを食べていた息子が、暑さで不機嫌になってきたのをいいことに「部屋にいこうか~!こうちゃん!」と言って、私は早めに部屋へ引き揚げた。「さちをちゃんも、食べたら早く部屋にいこうな!」と強く促しました。「ごめんな、こんなに暑いのに。」と私が言うと、さちをちゃんもさとこちゃんも「いいよ~、私たちはBBQとか好きやし~。」と優しい言葉。
そう言いながらも、私とさちをちゃんは部屋に、、、。そうこうしていると「あー雨やー!」といって、わらわらと大急ぎでテントを片付ける両親と姉とマイマイ、そしてなぜかお客様のさとこちゃんの姿。なんという混乱のBBQか。みんながゆでだこ状態で部屋になだれこんできた。そうして、みんなでさちをちゃんが持ってきてくれたクラブハリエの大きなバームクーヘンを仲良く食べた。みんな、あの地獄のようなBBQが終った事に安堵していたに違いない。
夕方、さちをちゃん達は帰路につき、マイマイは死んだように眠り、みんなぐったりしていた。そんな中、姉は「私、草刈りしてくるわ~!」と言って、また畑に出かけて行った。バイソン姉は、「BBQって楽しいなあ。」と言っていた。さちをちゃんが、私の母に「ナホちゃんって、いつからああなんですか?」と聞いていた。小さい頃からです。