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イラストレーター瀬島志保子のブログ
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一人で餃子。

数週間前に、近所の中華料理屋で水餃子を食べてから、度々寝る前に水餃子の事を考えていた。それから何度か「私、餃子作るから。」と夫に宣言するも、あの皮に包む作業の面倒臭さを考えると、いつも私は寝る前に水餃子の事を思い描くだけで実行に移せなかった。

でも、インターネットで魅力的な水餃子のレシピを見つけて、ついに私は実行に移した。「エビとレンコンの水餃子」なんて美味そうなんだ!

私が小さかった頃、我が家ではよく餃子を作った。それも父が率先して作ってくれていた。年に数回だけ、父が突然「オレはひと味違うんだぜ」という所を見せつける為に、料理をすることがあった。それは、しいたけをめちゃくちゃ入れるめんつゆとか、牛丼とか、ゴルゴンゾーラチーズのスパゲッティとか、突然チャイを作ったりなどで、父が料理した後の台所は道具が出しっ放しで荒れ果てた。そして、偉業を成し遂げたあとの父は、その料理を食べる私達の顔を見て「どや、うまいやろ。」と誇らしげに言うのだった。すべてが美味かったわけではないと私は記憶している。でもその大変に大げさな料理の中でも、私は餃子が一番好きだった。それは大抵日曜日などで、家族全員が一丸となって餃子を包むのだった。餃子に捧げる日曜日なのだった。

うすい皮の中に、ニラやひき肉がたくさん入った具を入れるのだが、その量の調整がすごく難しくて、上手に包めるとみんなに披露して喜んだ。その作業中でも、父は餃子に関するうんぬんかんぬんを語っていたように思う。

だから私にとって、餃子とは大勢でワイワイしながら作る物であって、一人で包んだって楽しくも何ともない。それにしても、小さい頃にやたら餃子を包んだせいで、私ってなんて包むのが上手いんだろう。そんなことをぼんやり考えながらも、私はようやく一人で、無言で、テレビもつけずに餃子を包み終えたのだ。

孤独に耐えながらも、どうしても食べたかった水餃子だったのに、なぜかこの日だけつわりちゃんがうっすら頭をもたげていた。それは調理中、エビの皮をむいている時からもやもやとしていた。エビって生臭い。ニラも臭過ぎる。グラグラしながらも、ゆでたら絶対美味しいに決まってる。そう自分を励ましながら、やっと茹で終えた。

やはりダメだった。調理中のエビの匂いが鼻の中に住み着いて、三個くらいしか食べられなかった。その分仕事から帰って来た夫にモリモリに盛りつけた。「おいしい?おいしいよな?何点?」とにじりよったら、「ニラがちょっとクサイから80点。」という事だった。あ、私以外でもやっぱり臭かったんだね。つわりのせいだけじゃなかったんだね。

父は、もうとんと料理を作らなくなった。黄色いソファに座って、ず〜〜〜っと鬼平犯科帳を観ている。それでも時々餃子を無償に食べたくなるようで、専門店の餃子を突然大量に買い込んだりしている。私はどこの餃子を食べても、絶対に小さい頃食べたうちの餃子が一番美味しかったと思うのだ。

だからもう一度、作りたかったけど、私は包み方しか教わってなかったんだった。

  • 2012年9月21日
  • 日々
三岸節子記念美術館。
細々と準備を。
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