当たり前だけど、去年なったら今年も梅はなるんだね。
おばあちゃんが「梅がなったから取りに来てえ」と言っているのを聞いて、「ええ?また?」と首をかしげそうになりましたが、あれはすでに去年の事か!去年も同じようにおばあちゃんと一緒に梅をもいだのでした。おばあちゃんはあの広大な畑で、毎年同じように同じサイクルで種まきと採取を繰り返しているんだ!とものすごく当たり前の事なのに、妙に驚いたのでした。去年は「なんて梅もぎは大変なんだ、、、。」と思ったものでしたが、彼女は毎年それをしていたんだった。そりゃあ、O脚にもなるわ。
でも、野菜や果物は毎年同じように実をつけるわけではなく。一昨年はどっさりで、去年はちょびっとで、今年は普通で、というように気まぐれです。
おばあちゃんちには三本梅の木があって、小梅と中梅と大梅です。小梅と中梅は虫にやられまくって、私が木をゆらすと、私の全身に虫が降り注いできました。人は案外大きなショックを受けると、声はでないものです。私は無言で、手にびっしりとついたアブラムシの死骸を洗い流しました。虫が嫌いなヨーコちゃんだったら死んでいるかもしれない。
小梅と中梅は見限って、大梅の採取に向かいました。おばあちゃんが日に日に細っていくので、今年は私だけで梅もぎをするといっていたのに、なぜか三メートルくらいある竹の棒を引きずりながらおばあちゃんが近づいてきました。そして手の届かない場所になっている梅の実を、つぎつぎとおばあちゃんは叩き落としていました。私が同じようにしても梅はなかなか落ちてくれないのに、おばあちゃんがすると梅はうまいこと落ちて来ました。
彼女はまだまだイケる!!!そう確信した瞬間でした。
数日後、取った梅は梅ジュースになるべく、瓶の中でひしめいておりました。おばあちゃんはこの梅の上にのっけた砂糖がじんわりと溶けて行くのを毎日食卓の上でにやにやして見ているそうです。私達がおばあちゃんちでご飯を食べる日に食卓にこれがバーンと置いてあるとけっこう邪魔なのですが、彼女にとっては娯楽の一つなので、誰もそれを食卓から引きずりおろそうとはしないのです。
彼女は、流し台の横に放置してあるじゃがいもから芽が伸びて来た時も、にやにやしてずっとそれを見ていました。うちの姉は、ジャガイモから伸びて来た芽がこわくて触れられず、母に言って引き取ってもらっていました。人それぞれです。