多分村上春樹を好きな人はみんな「ハルキスト」なんて呼ばれたくないだろうな、と思います。村上春樹を好きな人はたぶんそういうのを一番嫌がる類の人々だろうと思うからです。村上春樹自身もそういう種類の物事からは距離をおきたがっているでしょう。
私は村上春樹の本は好きです。でも自分はそもそも読んだ本の種類が多いとは思えないので、その今まで読んだ少ない本の中では村上春樹は一番好きだという感じです。その中でもノルウェイの森はやはり一番印象深い本なので、公開を楽しみにしていました。
菊池凛子さんがとても良く、暗くてどこを見ているのか分からない目の演技や、「悲しくて悲しくて死んでしまいそうだ」という気持ちになるように泣くシーンが見ていてざわざわしました。となりのトトロでさつきが泣くシーンと同じという訳ではないんですが、胸がざわざわする、という点では私の中で似ています。泣くシーンだけでももう一度観たい。
松山ケンイチは最近テレビでの訛りが目立ち過ぎていて、もう全部なまって聞こえました。緑が「ワタナベ君、青森は行った事ある?」と聞いてワタナベ君が「ないよ」と答えるシーンは「おまんのふるさとやろが」と言いたくなりました。
緑を演じる水原希子さんは、歩くと「キュッキュッ」と音がしそうなほど鼻や口の締まり具合がかわいかったです。声も初めて聞きましたが、いい声しています。ちょっと低めなのに甘いという、、、。
ハツミ役の初音映莉子さん。初めて見ましたが、彼女が登場するシーンだけ突然昔の香港の歓楽街のような雰囲気になり、でも上品なんです。とても上品。特別な空気を持っていたと思います。顔は際立った特徴があるわけではないんですが。
玉山鉄二さんは、70年代ぴちぴちタートルネックを着るのをよくOKしたなあと思う程、なんだかぴちぴちすぎてお笑いのように見えました。「監督は笑わそうとしているのかもしれない」とさえ思いました。しかし鉄二の印象がそれで良くなりました。
時に大自然を映し出したり、70年代のアングラな雰囲気を醸し出したりする映像がとてもかっこよくてきれいで、トラン・アン・ユンさんのような美意識の方に映画を撮っていただいて私はとても嬉しく思いました。特に風の強い中で直子とワタナベが恥ずかしそうにしている映像が好きでした。
あとは、女性の裸がでてくるわけではないのに、異常に生々しく感じました。これは一人で観ないと気まずさに耐えられないと思います。くれぐれも親と観るのだけはやめてください。