山の仕事っていうのはウソで、ただ母が家の周りの雑草を草刈り機でかっているだけの話です。最近姉は、この恐ろしい草刈り機デビューを果たし、おばあちゃんちの草も刈ったと私に鼻息も荒く自慢してきましたが、私はまだこうして二階から母の勇姿をカメラに収めるだけしかできません。
この界隈の男達は、皆早朝からとにかくけたたましい音のなるこの草刈り機で草を刈りまくる働き者なので、都会育ちで朝の弱いうちの父は「なんで朝からあんなうるさいねん!!!」といって憤慨する姿を私はよく見ます。私もこのけたたましい音でよく目が覚めるので、そのときはくやしくてなんか涙が出そうになります。
でも怠け者の私が、働き者のこの地域の人々をののしることなど到底できないのです。でもどうしても、自分があの恐ろしい音の出る道具を操って、使いこなす姿を想像できません。音が静かで軽い草刈り機が開発された暁には、私はようやく庭に出る事ができるでしょう。
ところでこの緑に犯され尽くしているのがうちの庭です。右に見えるのが、かつて物置だったけど今は蜂と小動物の家になってしまった小屋です。どうして蜂と小動物の家になってしまったかというと、扉が閉まらなくなったからだと思います。いつだって、誰だって出入り自由の小屋になってしまったからです。
時々、中がどんなことになっているのか恐る恐る覗いてみますが、大概鳥肌が立って見るのを途中でやめてしまいます。昔はただの物置きだったのに、生命体が潜むとなるともう、ただの物置ではなくなるのです。神秘の小屋、畏怖の念を抱かせる小屋へと変貌してしまいました。もう私の力ではどうすることもできません。
そしてこの写真で母が立っている場所は、昔うちで飼っていた猫のフンを捨てていたので、異常に肥沃な土壌となり夏にカブトムシが大量発生するという珍事をもたらしました。その飼っていた猫のミント君も、10年前猫エイズで永眠し、まんまとこの庭に埋められ、毎年12月24日の彼の命日に私が一人で線香をたむけています。私が草抜きをするのは、一年でその日だけです。ミント君の墓の周りだけ。
このように、小さな庭ですが色々な出来事がちゃんと起こるものです。